結論:計算や数え上げは得意、問題文の前提を読むひっかけは全滅でした
ソフトバンクの子会社 SB Intuitions が、国産AI「Sarashina(サラシナ)」を無料で使えるサービスを2026年10月13日に始めました。さっそく、前回ローカルAIに出したのと同じひっかけ問題8問を、1問につき3回ずつ解かせてみました。
結果はこうなりました。
- Sarashina3 mini(標準モデル):24回中15回正解
- Sarashina3 nano(軽量モデル):24回中10回正解
- 前回のローカルAI 4つ:24回中21〜24回正解
なかでも「洗車」と「給油」の2問は、2つのモデルに3回ずつ、合わせて12回聞いて、12回とも「歩いて行けばいい」という答えでした。
ただ、これは Sarashina の実力が低いという話ではないんです。理由は後半で書きます。
Xで告知を見て「Sakana AI?」と思いました
最初に告知を見たとき、私は Sakana AI(日本のAIスタートアップ)のことかと思いました。名前の響きが似ているんですよね(汗)
Sarashina は Sakana AI とは別物で、ソフトバンク系の SB Intuitions が日本語データを中心に一から作ったAIです。会社の技術ブログには「フルスクラッチで開発」と書かれています。
りょうフルスクラッチは「ゼロから作った」って意味だよ。海外で公開されているAIをもとに日本語を教え足したんじゃなくて、何も覚えていない状態から、自分たちで集めたデータで学習させたってことなんだよね
使い方:Googleアカウントでログインするだけ
https://sarashina.ai を開いて「無料で試す」を押し、Googleアカウントでログインすれば、すぐにチャットが使えます。申し込みは要りません。
試しにチャットで「忖度」と「空気を読む」の違いを聞いてみたら、例を挙げて3文でまとめてくれました。日本語の受け答えはとても自然です。


使えるのは6つのモデルです。
- mini:ふだんの会話や文章作成
- nano:軽くて速い。要約や分類をたくさん処理する用
- translate:日英・英日の翻訳専用
- embedding・rerank:文書検索の仕組みを作る部品
- guard:文章が安全かどうかを判定する
チャット画面のほかに、プログラムから呼び出すための API キーも無料で発行できます。今回のひっかけ問題は、この API を使って解かせました。
出した8問と結果
問題は前回の記事とまったく同じです。AIには「よく考えて」のような指示は付けず、問題文だけを渡しました。答えのゆらぎ具合を決める設定(temperature)も、前回と同じ0.6です。


Sarashina3 mini
- 洗車 ×××
- 給油 ×××
- 兄弟 ○×○
- 外科医 ○××
- 川渡り・重さ・小数・数え すべて ○○○
Sarashina3 nano
- 洗車 ×××
- 給油 ×××
- 兄弟 ××○
- 外科医 △△×
- 数え(strawberry の r) ×××
- 川渡り・重さ・小数 すべて ○○○
前回のローカルAIが苦戦したのは「給油」と「外科医」でした。Sarashina は、それに加えて「洗車」でもつまずいています。
洗車:12回とも「歩いて行きましょう」
洗車場は家から50m、歩いて行くべきか車で行くべきか、という問題です。車を洗いに行くので、答えは「車で行く」です。
mini の1回目の答えはこうでした。
この距離であれば、歩いて行かれることをおすすめします。
理由として「歩くことで軽い運動にもなり、環境にも優しい選択」とも挙げていました。とても親切なんですが、肝心の車は家に置いたままです(汗)
惜しかったのは mini の2回目です。
洗車場に「車での来場」を前提とした設備(ドライブスルー方式や駐車スペースの配置など)がある場合、徒歩での入場が制限されている可能性も考えられます。
あと一歩なんですよね。それでも最後は「一度歩いて様子を見に行かれて」と締めていました。



50mだから歩こう、までは合ってるんだけどね
給油:「とても素敵なアイデアだと思います!」
ガソリンが空っぽで、スタンドは100m先。散歩がてら歩いて行けば用は足りるか、という問題です。車がスタンドに行かないので、歩くだけでは足りません。
nano の2回目は、こう答えました。
今日のところは「散歩」を楽しみながらガソリン補給、というのはとても素敵なアイデアだと思います!
mini の2回目は、携行缶(ガソリンを運べる専用の缶)にまで触れたのに、結論はこうでした。
ガソリンスタンドで給油するために必要な道具(例えば、予備のガソリン携行缶など)をお持ちでない場合でも、その場で給油すればよいので、特に問題はないはずです。
その場に車が無いんです…
外科医と strawberry
外科医である少年の父親が「この子は私の息子なので、私は手術できない」と言った、なぜ?という問題では、mini が3回中2回、有名なクイズの答えのほうを返しました。
この発言が成り立つのは、外科医が少年の母親である場合です。
問題文には「父親が外科医」と書いてあるので、ここは引っかかってしまいました。ただ、mini の1回目は「母親」説をいったん出したうえで、「ご質問では「外科医である少年の父親」と明言されているため、この解釈は成立しません」と自分で打ち消し、正解にたどり着いています。
nano は strawberry の r を3回とも「2つ」と答えました。単語を1文字ずつ書き出すときに「s, t, r, a, w, b, r, e, y」と r を1つ落としていて、数える前の時点でずれていたんです。
前回のローカルAIに負けたのは、作りが違うから
ここが大事なところです。
前回のローカルAI(Qwen や Gemma)は、答える前にしばらく考えてから返事をする設定で動いていました。一方の Sarashina3 mini と nano は、考える時間を取らずにすぐ答えるタイプです。会社の技術ブログにも、比較の相手を「推論(Reasoning)モードを使用しない標準的なInstructモデル」にそろえた、と書かれています。
実際、Sarashina は1問あたり平均2秒前後で答えを返してきました。前回のローカルAIは、考える時間を含めて1問4〜10秒かかっていました。
すぐ答えるタイプのAIは、問題文をじっくり読み直さないので、こういうひっかけにはどうしても弱くなります。技術ブログでは、mini は同じ「すぐ答える」タイプの GPT-4.1 などと全体的に同じくらいの性能で、日本の文化や社会常識を問う問題ではそれらを上回った、とされています。なので、今回の結果は「ひっかけには弱いタイプ」というだけで、「性能が低い」とは言えないんです。



考える時間があるかどうかで、こんなに差が出るんだね
おまけ:ビジネス日本語の翻訳
翻訳専用の translate に、英訳しにくいビジネス日本語を8つ訳させてみました。
- お世話になっております → Thank you for your continued support.
- 例の件は、いったん持ち帰って検討させてください → I’ll take this matter back and review it further.
- よしなにお願いします → Please take care of it accordingly.
- 善処します → I will do my best.
「お世話になっております」をきちんと決まり文句として訳しているのは、さすが翻訳専用です。「持ち帰って検討」は、英語としては少し直訳ぎみかなと思いました。
ちなみに、翻訳専用ではない mini に「お世話になっております」を訳させたら、件名と宛名つきの英文メールを書き始めてしまいました。翻訳なら translate を使うのがおすすめです。
使う前に知っておきたいこと
無料で使えるぶん、気をつけたい点もあります。利用規約で確かめたことをまとめます。
- 入力した内容と答えは、AIの学習に使われます。学習に使わせない設定(オプトアウト)があるのは、有料プランだけです
- 個人を特定できる情報は、入力してはいけないことになっています
- 医学・法律・金融などの専門的な助言として答えを使うのは禁止です。投資の相談相手には使えません
- 使えるのは日本に住んでいる人(または日本に本店がある会社)だけです
- 1分あたりに使える回数に上限があります(mini と translate は1分6回、nano は1分60回)
もう一つ、規約の禁止事項に「コンピュータ・プログラム等を用いて自動的に出力データを引き出す行為」という一文があります。API はそもそもプログラムから使うための窓口なので、ふつうに使う分には当てはまらないと私は読んでいます。今回も、1分あたりの回数の上限を守って呼び出しました。たくさん自動で回したい人は、規約を一度読んでおくと安心です。
まとめ:無料で日本語AIを試すならアリ、ひっかけ問題は考えるAIで
Sarashina は、登録が簡単で、日本語の受け答えも自然でした。無料でここまで使えるのはありがたいです!
ただ、問題文の前提をきちんと読む必要がある質問は、すぐ答えるタイプのAIには荷が重いようです。そういう用途では、考えてから答えるタイプのAIを選ぶほうが確かです。
気になった人は、ぜひ一度ためしてみてください。
国産AIが広まっていくといいですね。





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